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一章 二つの影
雨が止んでる。
『何処に行くの?』
外に出ようとしていた背中に、僕は、わかってるはずの答えを聞いた。
『…湖』
いつもと同じ、そっけない返事が返ってくる。
『…人間に見つからないようにね。…見つかったら、いつもどおり殺せ』
『…ねぇ、人間って、殺さなきゃいけないのかな…』
『…』
その問いに、僕は答えなかった。
『…ごめん』
パタン
ドアの閉まる音がした。
『…人間に情なんて寄せたら、ダメだよ。フレア…』
もう見えなくなった背中に、僕は呟いた。
…お前を惑わすような人間は、僕が殺してあげるよ…
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