勝負

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この場を止めたのは江成くんだった。 一体 何を考えてこの空気にしたんだ? しばらくすると、 江成くんはこう続けた。 「それは全部 俺の茶菓子だ。 何人たりとも 食わせはしない!」 「はぁ!?」 また、何を言うかと思えば… どんだけ、食い意地張ってんだ。 「おいおい江成くん。 さすがにこれだけは譲れねぇよ。 これは、俺の ようかんだ。」 負けじと俺も対抗する。 「おい針川~。 いつから お前のになったんだ? まぁ いい。 結局のところ… お前の物は俺の物 だからな… よこせや。」 クソッ 出やがったな ジャイアニズム… ここで負けたら 今までの努力がなくなる! だが、これ以上は… 打つ手がない。 また…俺の負けか。 「まぁ いいよ。 俺 甘い物嫌いだし。」 「わーい。」 江成くんは子供の様に喜んで俺の手から羊羹を取った。 そのとき… 「残念…… って顔してるね。」 江成くんが母さんに呟いた。 何のことだ…? それよりも思ったが、さっきから江成くんの母さんへの風当たりが厳しくないか? 何か、コンプレックスとかでもあんのか? 「な、何を…言ってるの?」 ほら、母さんも動揺してるじゃないか。 絶対 母さん 江成くんの事苦手になってるよ。 「針川。 お前の母さん… なんだよな?」 次は俺かぁ? 意味わかんない事 言ってるし… 「は? さっきも言っただろ? 今更何言ってんだ?」 皆も、羊羹に手をつけず、不思議そうに江成くんを見ている。 一体 何を考えているのか? 次にどんな言葉を言うのか? それに興味がない者はいなかった。 だが、意外にも 江成くんが放った言葉は、言葉ではなかった。 「パリンッ」 「は?」 効果音…? またまた… 訳の分からない。 …ん? 何だ? この頭に引っかかるのは…? 何か… 大切な事を見落としている気がする。 何だ? 「針川ママ… あんた、さっき台所に向かったんだよな?」 「それが…どうかしたの?」 …………… 「何も……なかったか?」
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