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鳴海悠生の朝は一杯のコーヒーから始まる。
とは言っても特段金持ちであるとかそう言った事ではないので、ただのインスタントコーヒーであるわけなのだが。
淹れてくれるのはメイドさんでもなければ家政婦でもなく、彼の妹。
『自分の分のついでよついで!』と言いながらも毎朝淹れてくれる。
そんな妹に感謝しつつ朝ごはんを食べる前に悠生はそのコーヒーを頂戴する。
まずは香りを嗜む。今日もほろ苦い香りが鼻をくすぐってくる。
砂糖やミルクを入れてしまうと、豆本来の味がわからなくなるため、入れないことにしている。
香りを嗜み終わった後は音を立てぬようにゆっくりと口に含む。
そのままカップを置き、毎朝のように言っている感想を述べる。
「苦ぇ。やっぱ人の飲むもんじゃないぞこれ」
「じゃあ飲むな!」
「ぐえっ、って熱ッ!熱ッ!」
妹からのクロスチョップをうけコーヒーをこぼしてしまった。
幸いなことにも着ていたのは黒のスウェットで、制服に被害は無かったことだろう。
「全く、飲めないなら作らせないでよね、ホントに。挙句の果ては台無しにするし」
「悪い」
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