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台無しになったのは我が妹の所為であるのだが、言っても不毛な争いが起こるだけなので素直に謝っておく。 「ホントなんで毎日コーヒー飲むのに挑戦するかね?馬鹿兄の考えてることはわからんぜよー」 「うるせー、別に良いだろー」 はいはい、と言いながら妹は洗面台の方へ行ってしまった。 綾佳は見た目も悪くない部類ではあるのだが、いかんせん口が悪い。 そのことが災いしてなのか、同じ学校の不良たちを統べて居たりする。 だが、根は優しい奴で、そんなことになってしまったのも、気の弱い女の子を虐めていた糞男子供(綾佳曰く)を一人で撃退してしまった背景がある。 もう少しその優しさを兄に分けて欲しいと思うのだが、いかんせん、それは甘えと言うべきものであろうか。 「おにいちゃーん、私のアイロン知らなーい?」 洗面所のほうから綾佳の間延びした声が聞こえる。 「知らねー!洗面台脇のワゴンの二段目に無かったら俺は知らねー」 「おっけー、有ったよありがとー」 毎日使っている器具の在り処を知らぬ妹に本当にそれで大丈夫なのかとか色んな疑問を抱きつつ、俺も身支度を整える。
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