第一章 /弐

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私は下り坂の勢いを利用して、駅まで一気に駆け抜けていた。 呼吸困難で、心臓が爆発しそうな勢いだ。 もう駅の周辺には、まばらにしか人がいない。 商店街もなく高架駅と広いバスターミナルしかない駅前は、買い物客も少なく閑散としていた。 自動改札を潜り、ホームへと続く長いエレベーターに乗る。 やっと足が止まり、乱れた呼吸を整えるように胸を押さえた。 なんだろう……これ……。 例えようのないモヤモヤとした嫌な感じ。 今まで感じた事の無い不快な感覚が、ずっと体に付きまとっている。 ホームに着くと、携帯電話にメールの着信が入った。 制服のポケットから慌ててピンク色の携帯電話を取り出す。 メールの相手は分かっていた。 アメリカに住んでいる、弘樹(ヒロキ)叔父さんだ。
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