第二章 占い研究部

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涼やかな風と共に、空中から舞い降りる精悍な姿態。 艶やかな黒髪は相変わらず少し長めで、前髪の隙間から見える切れ長の瞳は漆黒の宝石のように美しく煌いている。 容赦なく降り注ぐ五月の太陽に照らされた体からは、珠のような汗が飛び散っていた。 ――なんて、綺麗なんだろう。 集団の中にいても一際目立つ端整な顔立ち。 サッカーボールを追う姿は、中世の物語から抜け出した騎士のようだった。 「綾芽ちゃーん、次はお昼ですぅ。理奈お腹空いちゃった。早く着替えてお弁当食べようよぅ」 「あ、うん。そうだね。急がなきゃ」 理奈に袖を掴まれて、校庭を引きづられる。 私は名残惜しそうに、もう一度男子の集団に振り返った。 授業終了のチャイムはとっくに鳴っているのに、櫂達はまだ白いボールを追いかけている。 もっと、姿を見て居たいのに――――。 素直に言い出しにくくて、そっと諦めた。 体育館の一階にある更衣室で着替えて教室に戻る。 弁当箱をかかえた理奈は、手際よく自分の周りの机を二つ引き寄せてお誕生日席にストンと座った。 私も自分の弁当箱を持って、着席する。
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