第一章 出会い

6/7

87人が本棚に入れています
本棚に追加
/618ページ
<OthersSide> 祠に近づいて行く少女を、遠巻きに見ている青年がいた。 黒い切れ長の瞳の、端整な顔立ちの青年だ。 長めの黒髪を風に揺らしながら、キッと闇を睨みつけている。 「なぜだ?……。なぜ、あいつが出てこれたんだ?」 青年が、低い声で呟いた。 場の空気が変化し、チッっと軽く舌打ちする。 ――歓喜と興奮と絶頂。 その後に続くのは、死、恐怖、嫉妬・・・欲望。 青年の瞳が細まった。 「呼ばれたとでも言うのか?……」 つう――と、額から汗が流れる。 暗雲と共に、制服姿の少女の前に狐が現れた。 もちろん、ただの狐ではない。 彼女には見えないだろうが、尾が9本に分かれている妖弧だ。 それは、赤い屋根の祠に封印されていた魔物だった。 封印が解かれ、魔力が噴き出している。 「まずい……!」 青年が、祠に向かってダッシュする。 狐が、真っ赤な口元を三日月型に歪めた。
/618ページ

最初のコメントを投稿しよう!

87人が本棚に入れています
本棚に追加