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<OthersSide>
祠に近づいて行く少女を、遠巻きに見ている青年がいた。
黒い切れ長の瞳の、端整な顔立ちの青年だ。
長めの黒髪を風に揺らしながら、キッと闇を睨みつけている。
「なぜだ?……。なぜ、あいつが出てこれたんだ?」
青年が、低い声で呟いた。
場の空気が変化し、チッっと軽く舌打ちする。
――歓喜と興奮と絶頂。
その後に続くのは、死、恐怖、嫉妬・・・欲望。
青年の瞳が細まった。
「呼ばれたとでも言うのか?……」
つう――と、額から汗が流れる。
暗雲と共に、制服姿の少女の前に狐が現れた。
もちろん、ただの狐ではない。
彼女には見えないだろうが、尾が9本に分かれている妖弧だ。
それは、赤い屋根の祠に封印されていた魔物だった。
封印が解かれ、魔力が噴き出している。
「まずい……!」
青年が、祠に向かってダッシュする。
狐が、真っ赤な口元を三日月型に歪めた。
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