二ノ宮家の人々。

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『そこでなんだが…』 厚志は人差し指で頬をポリポリと やりながら亜里沙に切り出した。 『父さん今回の解雇で出た退職金 じゃ、今のマンションのローンの 返済も厳しいんだ。 だから母さんと小さなアパートを 探して暮らそうと思ってるんだが 正直亜里沙も一緒にってのは生活 に余裕がないんだ。 でな、父さんの古くからの友達で 笹倉っているの知ってるだろ? その笹倉がな、亜里沙の生活の 面倒見てくれるっていうんだがな ちょっと条件があって…』 まず隣にいた母の表情がその 複雑な心境を物語っていた。 『笹倉んとこの流衣くんが亜里沙 のことをすごく気にいってる らしくてな、その、なんだ、 婚約者として招きたいんだと』 『えっと…… 笹倉さんは父さんの高校の同級生 って人だったよね?』 『てか、流衣くんて、確か私の 8つ下だったから、 まだハタチとかじゃ…』 『父さんもな、いくらか若く 見えるかもしれないし、 自慢の娘だけど、 うちの娘はもぅ28歳ですって 言ったんだ、だけど笹倉のやつが 流衣くんは本気みたいだし、 亜里沙ちゃんなら嫁にもらっても って言うもんだからな、 それに、 俺も亜里沙独りでどっかに やるくらいなら、心許せる 奴の近くのが安心だって気持ちが あるんだ。 流衣くんもまだ若いし、 今はまだ恋愛とか経験少ない だろうから、 そんなに婚約者って型に はまらずに、 気軽な気持ちで来てもらえれば いいって笹倉も言ってくれてる から。どうかな亜里沙。』 『…どうかなって、流衣くんと 歳だいぶ離れてるのに突然そんな こと聞かされて、 婚約者としてってことは結婚を 視野に入れた上で一つ屋根の下で 暮らさないかってことでしょ⁉ 私まだそんなこと決められないし だいたいそんな気持ちで流衣くん と一緒に暮らすなんて、 なんだか気が引けるし、 向こうのご両親だってきっと…』 『…そうだな。ごめんな亜里沙』 『父さんのせいで突然こんなこと になっちゃって』 うつむいた父が肩を震わせて 泣いてるかの様に見えた。 『…お父さん分かったよ、私、 とりあえず笹倉の家に行ってみるよ❗』
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