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『女将さーん、只今戻りました……って何これ…』
紗羅は園屋に帰ってきて早々驚いた。
目の前には血に染まった女将さんが倒れていたからである。そして、あちらこちらに争った形跡がいくつもあった。
紗羅は慌てて女将さんに掛け合った。
『女将さん、女将さん!誰にやられたの?ねぇ…やだよぉ……』
ガタッ
紗羅は物音がした方へと顔を向けた。
『だれっ?』
「姐はん……うちがいながら…」
そこには、肩に刀傷があり辛そうに歩く遊女の姿があった。
『雲衣っ!あんた…動いたらあきまへゎ!今医者呼んでくるさかい…じっとしてるんやぇ』
紗羅は女将と雲衣を布団に横たわらせた。
怒りに満ちた紗羅を誰も止めることはできないだろう。
「姐はん……女将さん守れんかった…うち…情けのうて…」
『雲衣が気にすることありんせん…あちきがいない間に何がありいした?』
紗羅が遊女言葉で話すときは、自分が遊女になったときだけとみんなは知っていた。
今の紗羅は遊女として、太夫としてこの現状に凄く腹を立てていた。
もちろん鳳紗羅としても。
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