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「姐はん…うちはもう助からへん……それに…助かったとしても園屋にはおれへん」
雲衣はこの店や女将たちを守れなかったことに、自分を責めていた。
『なに言うてはるんや?雲衣は園屋の、あちきらの家族でござんしょう?ここを出るなんてあきまへん…それにあちきを越えるまで死なん言うたは雲衣やないかぇ』
「姐はん…女将はんはまだ助かりますぇ…どうか女将はんだけでも……うちは姐はんの元で働けて嬉しゅうごさんした……」
雲衣はそれ以上話すこともなければ、笑うこともなかった。
『おさらばぇ……』
紗羅は大泣きした。
そして、先ほど別れた岡田を探しに行こうとした。
「紗羅………これは何だ」
そこには先ほど別れたはずの岡田がいた。
紗羅は思わず泣き出してしまった。
『うっ……女将さん…医者の所つれていくから……手伝って…』
かすれかすれ声の紗羅に岡田は何も言わず、女将を抱きかかえ医者の元へと急いだ。
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