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「行くわよハヤテ号!」
「ワンッ」
ご主人さまが投げたボールを追って走り出す。風が気持ちいい。
落ちてくるボールを地面に落ちる前に口で受け止めると、ご主人さまは僕を褒めてくれるんだ。
なんだろう、ご主人さまが笑っていると安心する。
「よく出来たわね、ハヤテ」
勢いよく尻尾を振ると、ご主人さまは僕の口からボールを取った。
その時、もう一人別の人の匂いが鼻をくすぐる。
「ワゥン?」
あれ?この匂いは……。
「ハヤテ号?どうしたの?」
その匂いがだれのものか理解した途端、僕は走り出していた。後ろから僕を呼ぶご主人さまの声が聞こえたけど、僕は気付かなかったんだ。
茂みを抜けると、先程いた場所よりも広い場所に出る。目の前には青い服を来た男の人が二人、何かを食べていた。
一人は金髪で、もう一人は黒髪の…
「ワン!」
やっぱり「たいさ」だ!
僕は元気良く「たいさ」の足下まで走ると、黒い瞳に見つめられる。
「ん?ハヤテ号じゃないか」
「コイツがいるってことは、中尉もこの近くに…?」
「だろうな」
「たいさ」は僕の体を抱き上げる。
「ワンッ」
「どうした?」
僕は今まで「たいさ」が食べていた物を見つめた。
「腹が空いてるんじゃ?」
「食べるか?ハヤテ」
それを突き出されたけど、僕は慌てて首を横に振る。前にも「たいさ」から食べ物をもらって、ご主人さまに怒られたことがあったんだ。
『勝手に食べ物を与えないで下さい!』
「たいさ」も怒られたのに、忘れちゃったのかなあ?
「良く躾(しつけ)られてますね、さすがは中尉ッス」
「本当に、賢い奴だな」
大きな手が僕の頭を撫で回す。たいさの手はあたたかくて気持ち良いんだ。
「…号!ハヤテ号~!?」
…あ、ご主人さまだ。
「ワンワンッ」
「ここですよ、中尉!」
ご主人さまは僕を見た途端に笑顔になったけど、たいさ達に気付くと驚いて固まった。
「どうしてここに?」
「見ての通り昼食中だよ。今日は朝から視察の予定が入っていてね…」
「ちょうどこの近くに屋台があったんで、今食べていたんです」
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