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壁時計が14時45分を指した途端、リザは立ち上がって部屋を出る。
いつも15時になると、彼女は紅茶やコーヒーを入れてくれるのだ。
「…あれ、もうそんな時間なんですね」とフュリーが眼鏡を外し、レンズをふき始めた。ブレダとハボックは椅子に座ったまま、両腕を伸ばしている。
「ところで大佐は、まだ軍法会議から戻られないのですか?」
「あ~?そういやまだ、戻ってきてないッスねえ」
「何か聞いているか?ファルマン」
「いえ、軍法会議が長引くのはいつものことなので…」
大佐直属のマスタング組は、ひとつの結論にたどり着く。
自分達が知らないことは、リザ・ホークアイ中尉が知っているであろう。
「よう!遊びに来てやったぜ~!」
ノックの後に入ってきたマース・ヒューズ。
「お疲れさまです、中佐。
大佐なら軍法会議中ですが」
「ん?そうなのか?
せっかくわざわざ来たのによ」
もちろん、誰も招いてはいない客だ。
「まだご家族の自慢ですか?」
「いや、ちょっとロイに話があってな。居ないんなら仕方ねえ」
じゃあな、と背を向けて部屋を出ようとした時、リザが入ってくる。
「…ヒューズ中佐?」「ようリザちゃん。ロイはまだ会議中なのか?」
意外な来客に、ブラウンの瞳が丸くなっている。
「ええ。会議が長引くのはいつものことですから…」
「また上層部から嫌味を……あっ、いや何でもない」
一瞬で「鷹の目」に切り替わったリザの睨みが効いたのか、ヒューズは慌てて口を閉じた。
「大佐に伝言なら、私が代わりにお伝えしましょうか?」
「いや、いい。自分で言うよ」
「遠慮なさらなくても…」
「いやそうじゃなくて、その……『男同士の積もる会話』だ」
つまり、女性である自分には聞かせたくない話なのだろう。
「わかりました」
これ以上はプライパシーに関わると判断してくれたのか、自ら身を引いてくれた。
マスタング組にカップを配った後、リザはヒューズにもカップを渡す。
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