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「…あの、中佐。まだお時間は大丈夫でしょうか?」
「ああ、あと40分位ならな」
「業務に差し支えなければ、今から一緒にどうですか?」
「「は?」」
リザ以外の人物は、その言葉に目を丸くする。
「リ、リザちゃん~?( ̄○ ̄;)
それは一体どういう…」
「ですから、今からご一緒にティータイムしませんか?と言うことです」
…ブホッ!
全員が、その爆弾発言に飲み物を吹きかけた。
「リザちゃん…。
君、今スゴい発言したね∑(°□°;)」
この場に大佐がいたら、今頃ヒューズは「嫉妬」という名の焔で焼かれているだろう。
「何か、変なこと言いましたか?」
爆弾を落とした本人はきょとんとした顔をしていた。
箱を開けると、甘い匂いが漂ってくる。
「「おお~~」」
それはアップルパイだった。
「美味しそうですね、コレ、本当に中尉が作ったんですか?」
「ええ、昨日ちょっとね」
滅多に見せない笑顔に、男性陣はドキリとする。
「何かすごく嬉しそうですね、中尉」
「…そう見える?」
((何もなかったなんて顔には見えません))
自分達が手作りのパイに喜んだということ以外にも、何か理由があると察した。
切り分けたパイを皿に乗せていると、あることに気付いて手を止める。
今日は自分と大佐とマスタング組を含めた六人の分しか用意していない。もしヒューズが来ると分かっていたら、もう一人分作っていた。
(…急な来客だったから、仕方ないわよね)
ならば自分の分をあげればいいのだと、再び手を動かす。
ロイは疲れた表情で廊下を歩いていた。今まで軍法会議が予定通りに終わったことはない。
いつから上層部からの『嫌味』で締めるのがルールになったんだ、と叫びたかった。
(…はあ、中尉にコーヒーでも入れてもらうかな)
執務室の扉の前まで来ると、甘い匂いが鼻をくすぐる。
「ようロイ、今終わったのか?」
「何でお前が居るんだ」
…呼んでもいないのに。
「そう冷たいこと言うなよ。
お前に用があって来たんだ」
「家族の自慢以外なら聞こう」
…ああ、この匂いは昨日のアップルパイか。
「悪いねリザちゃん。気ぃ遣わせちゃって」
「いいえ。…大佐も食べますか?ありますよ」
「……へ?」
まさか自分の分まであるとは思わなかった。
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