失われる日常

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昨日まで華紅夜を茶化したり、クラスの盛り上げ役となっていた鉄心だった。 「どうして…あの時あなたは!!」 「ああ、俺は死んださ …現代人としての俺はな」 「えっ」 「俺はお前と同じ養子でな、小さい頃から育てられたんだって、育ての親は言ってた そして俺は神夜…いや」 顔を下に向け首を軽く振った後、鉄心は顔を上げる。 「神夜殿が転校生として未来に現れたその夜、俺は神夜殿に刺された 死ぬと思ったその時、一気に今までの記憶が蘇った その時分かったんだ…俺はここの人間ではなく 神夜殿に仕えていた武将だったんだ…てな」 「…なに…言ってるの…鉄心…」 鉄心はごきりごきりと指を鳴らしゆっくり華紅夜に近付いていく。 「でも、残念だ あなたも神夜殿の刀に刺されたはず それなのに、記憶が戻らないとは… 俺が受けたあなたの妖術がよほど強力な術だったというわけか」 後ろに下がっていった華紅夜は背中に壁が当たる。 「もう逃げられないぞ、華紅夜…」 「鉄心…やめて…」 「やめて?、ふっ…あなたは変わりましたよ …昔のあなたは俺に凄い嫌悪感を抱いていたのに」 フッ一一と神夜が鉄心の隣りに現れる。 「鉄心」 「はい、もはや漢室王の娘、華紅夜は記憶喪失になった今、ただのもぬけの殻です …もはや、不要でしょう」 「期待損だ…消せ」 一礼すると、華紅夜に方向に踵を返すと拳を握り締めて向かっていった。 (どうしよう…) (私…どうすればいいの…) (どうすれば…!!) あと数cmとなった途端、鉄心は飛び上がった。 (もう…… 分からないよ…!!) 鉄心が拳を前に出し華紅夜目掛け突進してきたその時だった。 ドオン!
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