失われる日常

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「ちっ…!」 「鉄心!…くそっ!こんな時に来やがって!」 「……」 その影を見た華紅夜の頬から涙が一つこぼれ落ちた。 鉄心は跪いた状態で後ろに下がる。 拳を受け止めた人物は華紅夜の目の前に降り立った。 長身で髪を上に結い、戦国時代にいた武将のような鎧姿、そして長い槍を持っていた。 「あなたは…」 「君は此所にいろ」 「…ふっ、その槍……ようやく未来へと行けた、というわけか 趙雲…」 趙雲と呼ばれた青年は立ち上がった鉄心の言葉に動じない。 「未来へついたのは私だけではない 殿や殆どの武将がこの世界への転送に成功した これも全て…諸葛亮殿や張角殿のおかげだ」 「へぇ~」 話を聞いていた神夜が、刀で肩を叩きながら納得の声を出すと、趙雲が振り向く。 「途中で諦めればいいのに…まぁご苦労さんだぜ」 パチン! 神夜が指を鳴らした途端、風が巻き起こった。 「…!待て!逃げるつもりか!」 「ふん!都合が悪ィだけだ! …華紅夜!最後の言葉だよーく聞けよ!!」 名前を呼ばれた途端びくりとし風に消えていく神夜の姿を見る。 「俺は、お前だ一一」
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