失われる日常

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「……」 姿が消えた神夜に華紅夜はただ呆然としていた。 (神夜は、わた、し…?) 「華紅夜…と言ったね」 「!!」 優しい声で我に帰ると、趙雲の顔が華紅夜の目の前にあった。 「あなたは…」 「私は趙雲、字は子龍だ 訳あってあなたが今いるこの時代で現代人として身を隠している」 「現代人?」 そう言えば、鉄心も言っていたような…と脳裏にその事が思い浮かぶ。 この人なら私が何者か分かっているかも知れない。そう思った後、趙雲の首元を掴んだ。 「!!」 「あなた!!一体何者なのよ!!」 「華紅夜…」 「現代人とか武将だとか妖術だとか… もう訳分かんないしさ!! それにあたしは誰なの!!一体なんなの!!」 「…それは……」 趙雲が険しい表情で顔を逸らす。 華紅夜の瞳からは涙が溢れていた。 「……ごめんなさい、もう…頭がパニクってて……よく分かんなくて」 「……」 趙雲は暫く涙声で話す華紅夜を見た後、決心した。 「華紅夜」 「…」 名前を呼ばれると、華紅夜は顔を上げる。 頬は涙が流れ落ちた筋ができ、目は涙で充血していた。 「真実が知りたいか?」 華紅夜は頷く。 「その覚悟はあるか?」 華紅夜は二度頷く。 「あたしは…真実のためなら、どうなっても構わない」 それを聞いた趙雲はうんと頷き、華紅夜の肩に手を乗せた。 「分かった ならば…私たちのいる場所へ君を案内しよう」 趙雲が立ち上がると、自分も立ち上がろうとしたが、急に視界が歪んでいき一一。 バタン! 「!華紅夜!!」 そのまま気を失った一一。
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