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スンホは、高貴な生まれを鼻にかける嫌な奴である。
呆れるほどに自信家で、ビッグマウス。
加えて高圧的で、自分勝手な男だ。
「私のスープにだけニンジンが入っていないぞ!」
その日彼は、朝っぱらから元気に騒いでいた。
隊の中で決められた食事の時間で、全員がテーブルに付き、さあ食べようとしていた矢先のことだった。
その日のメニューは、具だくさんのスープ一品のみだ。
それ以外には、くすんだグラスに注がれた水がある。
この組み合わせに秘められた、ボリューム不足を水で嵩まししようという魂胆には、彼を含めて誰も気付いていない。
「だからなんだよ」
呆れたような口振りで答えたのは、彼と同じ隊に所属するシェンシュンだ。
「なんだとはなんだね、シェンシュン君。その口振りは今私の神経を逆撫でしてくれたぞ」
スンホは斜向かいに座るシェンシュンに顔を近付けた。
「一体どうしてくれるつもりだね? 私のデリケートな神経が痛々しく逆立ってしまったよ。もう逆立って逆立ってけばけばだ。シェンシュン君、どうしてくれるつもりだね?」
「毛繕いが大変そうですね」
シェンシュンは溜め息混じりに言った。
表情には後悔がにじみ出ている。
関わらなければ良かったと言いたげだ。
「私を犬か猫と一緒にしないでくれるかな? ブラッシングなんて見た目に野暮ったい行為、私はごめんなのだよ。それよりもだねシェンシュン君。私は今ニンジンについて話がしたいのだよ。解るかな? ニンジンだ。カロチンたっぷり、オレンジ色の野菜だよ。土の中で逞しく育つのだ。ろくに日に当たらぬくせに清々しいまでのオレンジ色に成長するのだよ。見習いたいものだね。え? 君もそう思うだろう?」
スンホは一気にそう喋った。
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