†LESSON1†

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・鬱病治療は、当事者だけではダメ  鬱病にかかる全ての人が自殺をする訳ではない。自殺を解明するには「自殺に致るまでの心境」を知る必要がある。  鬱病の要因が二種なら…当然、自殺する要因も二種類に別れてくる。  疲労と虚無感が原因の場合は「疲れた、休息が欲しい」と、疲労から開放されたいと願うようのが要因だ。 ここに一つの例をあげよう。 『某サラリーマンのA氏は、不景気の会社と家庭の為に、夜遅くまで残業する毎日を続けた。人手不足を補う為にA氏が担った仕事量は莫大で、時には休日も出勤した。 その結果…過労とストレスの不眠症から鬱病にかかり、治療の為会社を休職。真面目な性格のA氏は、前向きに治療に努め、半年後には会社へ復帰した。復帰した時のA氏は不眠症も治り、精神状態も元通りに回復していたのだが…それから三週間余りにして、A氏は突然自殺した。』 A氏は確かに、医師が認めるだけ鬱病を克復していた。会社に復帰した時も、元気だった時と変わらなかったという。  実はこの時、A氏自体は完治していたのだが…A氏を取り巻く環境は、A氏が発病する前と何も変わっていなかったのが原因だった。  環境が改善されてなければ、当然A氏は再び発病する。しかもこの時は、前回の鬱病の感覚が記憶に残っている為、再発にさして時間はかからない。 「たまり続け、癒されない疲労感とストレス」「不眠症等の体調的苦しみ」「先が見えない不安」「苦しくなるばかりで報われない現実」…これらの現実から心底「開放されたい」と思う気持ちが「死ねば開放される?」と思うようになる。 この時点で、死に対する恐怖がない訳ではないから、本当はできれば死くはない。しかし、改善されない環境の中で「死への恐怖」より「苦しみから開放されたい気持ち」の方が大きくなっていき…やがて「開放されるには、もう死ぬしか残ってない」と感じた時、自殺を決行してしまった。 事実、A氏と同じ理由で自殺した人の中に、時折「疲れました」という内容の遺書を残す人がいる。この「疲れました」のメッセージには、死の恐怖を上回る「疲労感、報われない虚無感、未来への不安と失望感、不眠症等の体調の苦しみ」が含まれているのだ。
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