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壊されては積み,また壊されては積み,もう数えることなど不可能なほど,私は石を積み続けた。
いつしか涙も枯れ,声さえも失ってしまった。
立ち上がることすら出来ない私は,ただひたすらに石を積んだ。
「もういいよ」
頭の上で声がした。
そこには光が見えた。
光は私を照らしていた。
私はそんなことなど気にもしないで石を積んでいった。
機会のように動く手には,もう感覚など残っていない。
「ずいぶん頑張りましたね。すいませんでした。」
気づけば私の目からは涙があふれていた。
涙など,とうの昔に枯れたというのに。
声も出るようになっていた。
手の痺れや指の傷も消えていた。
私は泣き続けた。
どれだけ泣いたのかはわからないが,ふと気がつくとそこは地上であった。
記憶はなかった。
ただ目の前に,優しい笑みをうかべる父母がいるだけだった。
あぁ,私は生まれ変わったのか。
私は新たな赤子として,生きていくことを許されたのか。
私の目からは涙があふれた。
そして私は元気に泣いた。
今日も誰かが石を積む。
たった1人で石を積む。
完
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