†A lost shief†-失いし盗賊-

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ガンゴロガンゴロガンゴロローン。 相も変わらず、バケツを転がしたような重低音が響く。 こんなチャイムが鳴る酒場って……ここ、ルドカの街以外に存在しない気がするな。 「こら!ちゃんと聞いているのかい、クロ!」 ぼんやりと自分の世界にふけっていた俺に、酒場の女主人エダナの怒鳴り声が飛ぶ。 あまりの大声に、耳がキーンと耳鳴りしてしまって、俺は思わず片目を閉じて両手で両耳を覆った。 エダナに“クロ”という愛称で呼ばれている俺の正式な名前は、クロトシア・アムス。歳は二十六。 性別は……言うまでもなく、男。 職業は盗賊。五年前までは徒党を組んでいたが、現在はフリーだ。 瞳は黄色で、仕事の邪魔になる青髪は常に赤いバンダナで留めている。右頬には幅一センチ、長さ五センチ弱の斬り傷。 服装は緑のタンクトップに鎖を斜めに三カ所付け、紫のズボンに黒革のベルトを着用。 腕に金の腕輪、腰には銀色の鞘とマグナムが一丁。鞘の中にはダガーを一本しまっている。
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