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「小十郎」
畑仕事を終え、城に戻る途中、名前を呼ばれた小十郎は顔を上げた。
「どうされました?緋真様」
「少し、話がある」
そう言い、城とは逆の方…竹林に向かう。
小十郎は、黙ってそれについて行く。
「………それで、話とは何ですか」
「小十郎……あたしって 弱いかな?」
「……………」
唐突な質問に、小十郎は一瞬黙ってしまう。
「あたし、たまに不安になるんだ……。
後方支援とはいえ、何度も戦を経験してる。
だけど、実戦はまだしたことがない。
戦に出て、死なないって理由がどこにあるんだろうって……」
小十郎はそこで初めて、緋真が今朝の淡い浅葱色の着物ではなく白衣に青色の袴という朽木家の巫女装束姿だということに気がついた。
「…………緋真…様?」
緋真はずっと俯けていた顔を上げると、身長差のせいで上目遣いになりながら小十郎の顔にずいっと自分の顔を近づける。
「だからお願い小十郎。
あたしを強くして」
「そ…そんな急がなくともよいと思いますが……」
緋真はそれでも引かず、
「じゃあ、今のあたしがどれくらいの実力あるか、見てほしい」
とまで言い出す。
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