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【奥州・米沢城】
朝日が空を明るくする頃、緋真は寝間着の白衣姿のまま自室の中央に正座をし、目を閉じる。
すると、緋真の白衣の袂から幾枚もの札が出てきた。
青い光を帯びた大量の札は、彼女を囲むように円になり、肩の高さあたりで浮いている。
床には、大きな円形の奇怪な紋様・邦陣が走り、札と同じく青く発光している。
『八万事の神、天翔る龍よ 地に眠りし大いなる力――』
形のよい唇からこぼれる、礼詞。
小さな声だったが、しんとした広い部屋に響く。
『―魔物、災厄……彼の力にて討ち祓え』
言い終えると同時に、スッと目を開く。
ぴったりと閉じられた障子に映る、外廊下の柱。
そこに視線を向けると、明るく言った。
「おはよ。小十郎」
柱と同化していた影が、微かに揺れる。
常人には捉えられない、僅かな気配を察知されたことに驚いたようだ。
「入りなよ。そんなところにいないで」
影は少し躊躇ってから、すっと障子を開けた。
外廊下には緋真の思った通り、片倉小十郎がいた。
彼はその場から動かず、緋真の周りに札が舞っているのと邦陣がそのまま出現しているのを見て、鋭い目を申し訳なさそうに伏せた。
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