伊達の姫・緋真

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「申し訳ありません。 祈祷の邪魔をしてしまい……」 「いいのいいの。 もう終わったし、ね」 それを聞いた小十郎の目が、すっと細くなる。 札も、邦陣も出ている。 それは、まだ祈祷が完全に終わってないことを示していることを、彼は知っている。 その目に気づいた緋真は、ばつが悪そうに苦笑いしながら、目の前に浮く札の一枚に触れた。 「まあ、まだ完全には終わってないんだけどね……。 ちょうどいいや。小十郎 そこを全部開けて」 札から湧き出るようにして出てきた真っ白な弓を持ち、指示をすると小十郎はすぐさま緋真の目の前の障子を開き、脇に下がる。 緋真は邦陣もそのままに立ち上がると、別の札に触れる。 すると、先程の弓と同じように純白の矢が出てきた。 それを掴むと、弓矢を頭の高さに掲げ、ゆっくりと下ろしながら弦と弓を押し広げる。 矢頭を部屋の中から見える東の空に向けると、瞳を閉じた。 邦陣と札の光が徐々に強く輝き、弓矢も青い光を帯び始める。 そして ―――――放つ。 瞳を開いたときにはもう、矢は明るくなりつつある空に消えていた。 それを追うようにして、高い笛のような音が辺り一帯に響く。 「……"砕"」 その言葉を受け、空に青い光が一瞬、瞬く。 .
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