83人が本棚に入れています
本棚に追加
/21ページ
「申し訳ありません。
祈祷の邪魔をしてしまい……」
「いいのいいの。
もう終わったし、ね」
それを聞いた小十郎の目が、すっと細くなる。
札も、邦陣も出ている。
それは、まだ祈祷が完全に終わってないことを示していることを、彼は知っている。
その目に気づいた緋真は、ばつが悪そうに苦笑いしながら、目の前に浮く札の一枚に触れた。
「まあ、まだ完全には終わってないんだけどね……。
ちょうどいいや。小十郎 そこを全部開けて」
札から湧き出るようにして出てきた真っ白な弓を持ち、指示をすると小十郎はすぐさま緋真の目の前の障子を開き、脇に下がる。
緋真は邦陣もそのままに立ち上がると、別の札に触れる。
すると、先程の弓と同じように純白の矢が出てきた。
それを掴むと、弓矢を頭の高さに掲げ、ゆっくりと下ろしながら弦と弓を押し広げる。
矢頭を部屋の中から見える東の空に向けると、瞳を閉じた。
邦陣と札の光が徐々に強く輝き、弓矢も青い光を帯び始める。
そして
―――――放つ。
瞳を開いたときにはもう、矢は明るくなりつつある空に消えていた。
それを追うようにして、高い笛のような音が辺り一帯に響く。
「……"砕"」
その言葉を受け、空に青い光が一瞬、瞬く。
.
最初のコメントを投稿しよう!