【ある人喰い鬼のお話】

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そんな生活が続いたある日。 彼の体に異変が起きました。 何を食べても食欲が全く満たされなくなったのです。 と同時に少女がとても美味そうに見えてなりません。 彼はすぐに気付きました。 自分の中に流れる人喰い鬼の血が少女の肉を欲しているのだと。 彼はナリスを離れてから、一度も人肉を口にしていません。 少女といる事で自分が人喰い鬼である事を忘れていたのです。 その時、彼は初めて自分が人間でない事を悲しく思いました。 ですがいつまでも嘆いているわけにはいきません。 このまま人肉を食べずにいれば、近い内に彼は間違いなく目の前の少女を殺してしまうでしょう。 彼は少女を殺す事も、喰らう事もしたくはありませんでした。 そう。 この時彼は、人喰い鬼であるにも関わらず人間を愛してしまっていたのです。 *
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