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目が覚めた彼は少女に幾つか質問されました。
名前、親、出身、そして家の前に倒れていた理由などを。
しかし彼はその質問に何一つ答えられませんでした。
言葉が分からないわけではありません。
彼もその答えを持っていなかったのです。
少女はそんな彼をココに置く事にしました。
質問に答えないのは何か深い事情があると推測したからです。
そして名前のない彼に少女はまず名前を付ける事にしました。
必死に考える少女。
彼は聞きます。
その名前というものに、一体何の意味があるのかと。
少女は優しく答えました。
名前はその人の存在を示す大切なものだと。
『今日から貴方は ね!』
彼にはその意味が分かりませんでした。
それでも少女に名前を呼ばれる度体の中が温かくなるような感覚は決して悪くはないと思いました。
それは彼が生まれて初めて感じた"嬉しい"という感情でした。
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