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チューーーッ ジジジッ。
私は小指を鼠に噛まれた。
そこから滴った色は、今までの世界に無かった色だった。
そう、その時初めて私にも聞こえた! 鼠の声が! 早く目覚めなくては。
目を覚まして、パレードを見に行かなくては!
目覚めた後の世界、世界、新しい、広い世界、美しい世界!
そこには暖かい紅茶があるのか、ケーキがあるのか、美しい景色が、庭園が、眩しい光が、綺麗な水が、太鼓の音が、血が、襤褸が、鼠が
かじられた私の小指は腐っていたのかしら。
童話の絵本の紙の匂いが、暖炉の薪が、紅茶が、ケーキが
――回転する。 回転する色。 わからない、ここには何も無い。
知っているのに何も知らない。何も見ていない。
あの戦争と殺戮と罪は本物なのに、
私は白痴を気取ってまた別の現実を信じて夢を見たいのね。
だから世界は私を拒んだ。
だからハーメルンの音は私をそっちに連れて行かなかった。
だから私の世界とあの夢のパレードは歓声を上げてさよならを告げた。
霞んだ青い空と私の庭。
世界は徐々霧に包まれついには色を失っていく。
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