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―前田慶次―
ここは・・・どこだ?
辺りは一面焼け野原。
いや、すでに燃え尽き草木も生えてない状態。
何も無い地面の上に無造作に転がる夥(おびただ)しい程の数の死体。
ほぼ全ての死体が黒く焦げている。
中にはその形すら保っていないものもある。
かろうじて形が残っている死体の中に知っている顔があった。
あれは・・・勘助さん!?
慌てて駆け寄り口元に手を当て、呼吸を確認するが、手遅れだった。
よく見ると、付近には信房さんや昌幸さんといった武田の将全員が倒れていた。
皆倒れていたが、唯一幸村だけ獣のような得体の知れない何かに腹部を貫かれている所だった。
獣の手が幸村の首に水平に当てられる。
何をするかは容易に理解出来た。
勘助さんをその場に半ば乱暴に寝かせ、それを阻止するべく駆け出す。
走り始めたと同時に獣の手が引かれ予備動作を行い始める。
「やめろおおぉぉぉ!」
俺の叫びも虚しく、幸村の首が宙を舞う。
獣は首の無いそれを投げ捨てると、こちらに目を向ける。
俺は久しぶりに死の恐怖を感じた。
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