小旅行に行こう。

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━━…… 人間とは不思議な生き物である。 『ダメだ』と言われると余計に好奇心が働き気になってしまう。 それを食い止める為に『理性』があるのだ。 人間は『理性』を失い『本能』で動くと、時として禁忌をおかす事があるのだ……。 ……━━ 町外れの小さな旅館に若い男二人やってきた……。 「何か小難しい話だよな。」 小柄で華奢な少年・純也(じゅんや)は奇妙な本を見ながらいう。 「でも、この本に書かれてる事満更でもないよな。」 がだいがよく筋肉質な少年・喜雄(よしお)は、本の内容を見ながら深く頷いた。 「しかし、表紙が真っ赤でこんな気味悪い本誰が忘れて行ったんだろうね。 悪趣味というかさ。」 恨めしそうに純也は本を投げた。 「旅館の人、気づかないとか不自然じゃねぇ?」 本を拾い上げ、見ながら喜雄はいう。 「確かにな。 ……って、何してんだよ?」 純也は喜雄の不審な動きに反応した。 「いや、最後のページがさ張り付いてめくれないんだよ。」 べっとり張り付いている最後のページを喜雄は無理矢理こじ開けようとしていた。 喜雄のごつい手でこじ開けようとするも、全くもって開かない。 「いいじゃんか、別に。」 純也は強引にしている割には開かないどころか、破れもしない本に違和感を感じていた。 「ん~……。 気になる。」 何故か喜雄は無性に最後のページが気になっていた。 「お前、本能に負けてるな。」 ため息をつきながら純也は言った。 「ほっとけ。」 純也の言葉を気にしながらも、喜雄は諦めずに開こうとしている。 「なぁ、それよりこの近くにさ『魔のトンネル』っていう心霊スポットがあるらしいぜ。」 そんな喜雄をからかうように、ニヤニヤしながら純也は言った。 「まさか『行こうぜ』なんていうんじゃないだろうな?」 本を閉じ、喜雄はあからさまに嫌そうな顔をした。 「夏といえばそれしかないだろ?」 喜雄とは反対に純也はノリノリである。 「却下。」 ジトーッと喜雄は純也を見た。 「何でだよ!」 ノリの悪い喜雄に純也はムッとした。
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