夏空

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「現実……」  目を開けることが嫌になったここ数週間の日課は溜め息。  非日常的な刺激のある夢の世界を堪能した後に来る現実の陰鬱な朝にやる気も何もない。  雨戸を開けると光がこれ見よがしに入って来た。  目を細めて、今日も晴れ渡った空を見た。  何か祈るように、懇願するようにそれを見ても、何か変化があるとは思えないが、なぜかいつものもう一つの習慣として身についてしまった。  目も開けられないくらい光に溢れた空が大嫌いだった。羨ましかった。なんで私はこんなところにこんな小さく存在しているのかと泣きたくなった。  家族や友人、その他諸々が当たり前のように、雲のように遠くに流れて行く日常。  いつものように学校に行き、適当な会話をする。適当に勉強をする。何もかも適当に、ほど良くこなすことが、どうしてこんなにも退屈なんだろう。  ガラス一枚隔てた向こう側には、あんなに綺麗な空が広がっているのに。  蝉が鳴くほど暑い季節は、周りが明るすぎていつも緊張する。  哀しいほどに眩しい現実。寂しいくらい眩しい非現実。  現実を照らす太陽は、私に世界の全てを見せつけようとするかのようで、いつも怖い。  それなのに、影みたいな自分は人工的な光に安心している。  あまりにも眩しい夏の空が、じわりじわりと私を潰す。  日常は脆弱な心を蝕み、私の心を脅かし、私に逃避を決意させる。  しかし、この中途半端な私は、毎夜毎夜非現実に逃げても、また空を見たくなって現実に戻って来る。  その繰り返しの日常から脱出することもせず、空を見上げては今日この日も、目が眩んだ。
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