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「手伝うよ」
「あら、めずらしい。着替えてきなさい」
結局、比呂美は夜7時前に仲上家に着いた。私服に着替えず急いで台所へ向かう。
「おばさん、ごめんなさい、遅くなって……ぷっ」
台所の扉を開けた途端、比呂美はすぐに噴き出した。眞一郎が『うさぎさん』の絵の描かれたエプロンを着てそこに立っていたからだ。
「笑うことないだろう」
「あはははは、無理言わないで。あっ、そうそう、携帯」
「こんなの撮らなくていいから」
眞一郎は、さっさとそのエプロンを脱ぐと比呂美にそれを押し付けた。
「えぇ~もったいないぃ」
残念がりながら比呂美はエプロンを受け取り、そして装着。
……おまえ、似合いすぎ……
と心の中で興奮しながら眞一郎はその場にいられず、台所から出て行った。
眞一郎をからかった比呂美は、この後『母の反撃』を喰らうことになった。
「それにしても、かわいいですね、このエプロン」
「若い頃、『使って』いたのよ」
「え?」
(使う?)
比呂美は、『その先』を理恵子に訊けなかった。
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