私を守ってね

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私を守ってね

 次の日、誕生日当日、眞一郎は慌てて学校から戻ってきた。  朝食の時、理恵子が今日の誕生日の事に大して触れなったのがかえって不気味に思えていたからだった。 ……まさか、ド派手なことを考えているのではないだろうか……  いくら比呂美が賛同してくれたといっても、それはあまりにも無神経というもの。  眞一郎はずっと、どちらかといえば質素な誕生日を迎えていた。 ヒロシはあまり騒ぐのが好きではないし、酒蔵の従業員がいつも近くにいる中で羽目を外す事が出来なかったのだ。 だが、今年は少し『状況』が違う様に眞一郎は感じた。  家へ帰りついた眞一郎は、台所に居る理恵子を見るなり、ほっと胸を撫で下ろした。 何かの料理の下ごしらえはしていたが、周りを見渡しても特別変わった様子はなかった。 普段と変わらない。 「比呂美ちゃんは?」 「あー部活の会議で遅くなるって、6時過ぎるって」 「あらそう」  理恵子は特に表情を変えずに頷いた。 大丈夫だ、母に変わった様子はない、眞一郎はそう思った。
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