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花を眺めていると桂が三味線を持って戻ってきた。
「ほら、お前のお気に入りの三味線。」
「ああ、ありがとよ。」
桂から三味線を受け取ると俺は空を見つめ三味線を弾いた。
「死んだなら釈迦や孔子に追いつきて
道の奥義を尋ねんとこそ思へ
太閤も天保弘化に生れなば
何も得せずに死ぬべかりけり。」
もう俺の体は持たない………。
桂は俺が三味線を弾き終わると俺の隣で静かに泣いた。
(桂…俺の隣にお前がいてくれて良かった。)
感謝してもしきれねえ。
俺はゆっくりと瞼を閉じて暗闇の中へと沈んで行った。
慶応3年4月14日 高杉 晋作は、桜を見ぬままこの世を去ってしまった。
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