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気がつけば、俺は独りだった。
友達がいない訳じゃない。学校に行けば話しかけてくる奴が何人かいるだろう。
でも、それだけだ。
「気の合う友人を作らないのか」と聞かれれば「作りたくない」と答えるだろう。
作れないんじゃなくて作らない。その違いは俺の意志がそこに含まれているかいないかだ。
俺は人とのコミュニケーションが嫌いだ。俺がいくら理解しようと努めても、相手がそれに応えてくれない。現代はそんな人間ばかりだ。
だからなのかな、何に対してもやる気が沸かないのは。
俺は空を見上げた。
暗く、どんよりとした曇り空。今にも雨が降りだしそうな雰囲気だ。
青空はとても広く感じるのに、この空はどうしてこんなに狭いのだろう。
「教えてくれ。俺はどうしたらいいんだ。俺には何の意味があるんだ」
視線を空から地上へ。そこには赤と白の巫女装束を身に纏った一人の少女が佇んでいる。今俺がいるのは神社で巫女さんがいるのは何ら不思議ではないのだが、この少女の巫女装束は脇の部分が袖の部分と離れた作りになっている。その為、いまいち巫女という印象より巫女のコスプレと印象がある。
その事をこの子に言ったら怒られたけどな。
「アンタの人生に私は何の興味も無い。例え誰かの迷惑になろうと世界に反逆しようと醜く死のうと知ったことじゃない。けど、アンタが私に関係のあるところで何かしようと言うなら、私はアンタに干渉する」
……意外とお人好しなとこもあるのかね。
「素直に言えばいいのに。私は自分の意思で動かず、あくまで流れに乗るだけだって」
「好きに解釈しなさい」
「じゃ、助けてよ。俺一人じゃ何にも思い付かないんだ」
「仕方ないわね」
そう言った少女の顔には笑みが浮かべられていた。はにかむような笑み。
俺はそれに釣られて表情を緩めてしまった。
多分そうだ。俺と同じこと考えてる。
“面白い事になりそうだ”
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