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面食いな自覚はあった。目が行くのは綺麗なひとや可愛いひとだったし、ぶっちゃけ小早川先輩は今まで出会ったひとたちのなかでいちばん綺麗だ。
最初は、そんなにも綺麗なひとに出会ってしまった故のどきどきだと思っていたけれど、校内でまた彼を見つけたとき、俺の心臓はありえないくらいのスピードで爆音を奏で始めたのである。
あぁ、恋だ。間違いない、これは恋だ。体温は上昇、脈拍は異常、顔はみるみる間に熱く赤くなって挙動不審。
好きになったら猪突猛進タイプの俺は、そこまで自覚してしまったらあとはもう突っ走るしかない。
幸いにも小早川先輩はこの高校じゃ有名人。情報収集には不自由しなかった。
あからさまに好意をぶつける俺の態度に、微笑ましいと応援するひともいれば煩わしいと嫌悪を露にするひともいた。だって、小早川先輩は有名人で人気者で、ひっそりファンクラブまであったりするのだ。
陰口を叩かれたりそれなりの嫌がらせをされることもあるけれど、だったら自分たちも先輩の目に留まるようにアクションを起こせばいいと思う。何も行動を起こさないくせに文句ばかり言う奴らなんて、俺は全然怖くない。
「幸也っ、ここ三年の教室! 帰れっ」
「昼飯一緒に食おうっつったじゃないすかぁ! 先輩の好きなぷりん大福買ってきたんすよっ?」
「う……、ッわ!?」
「つっかまっえたー!」
「っ、てめ……」
小早川先輩の好きなとあるデパ地下スイーツ店の人気菓子、ぷりん大福。これを出すと、先輩は弱い。というか、甘党な先輩はコンビニスイーツだとしても甘いものをちらつかせれば結構ころっと行ってくれる。きっと今だってこの俺の右手に握られた紙袋のなかに鎮座しているであろうぷりん大福に釣られたに違いないのだ。
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