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角を曲がり階段を降りようとしたところ、上がってきた生徒にぶつかりそうになった小早川先輩がスピードを緩めた瞬間に距離を詰め後ろからがっしりと羽交い締めにすると、先輩は抵抗を見せたものの次第に大人しくなった。……まぁ今回の場合、ぷりん大福に釣られたというよりも昼時間で廊下に出ていた他クラスの生徒たちに見られたくないっていうのが本音だと思うけれども。
くすくすと聞こえる周囲の笑い声なんて、俺には関係ない。そんなのはとうに慣れっこなのだ。
身長百七十四センチという決して低くはない俺より十センチ近く高い先輩は、その大きさのわりにすごく細身だ。細腰に抱きついてぐりぐり頭を擦り付ける仕種を犬みたいだと揶揄されて、まるで本物の犬にするみたいに髪をくしゃくしゃとされるけれど、実はそれが好きな俺は口では嫌がるそぶりを見せても抵抗なんて微々たるものだ。それにこうすると、先輩は目を細めて少し困ったように笑いながらしょうがないなって言ってくれるのを俺は知っている。
「……ったく。ほら、教室戻んぞ」
そして、やわらかく髪を梳いてくれる手の平に俺は陶酔するのだ。
(not)continue...
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リハビリ第一弾。になればいいな←
続くかもしれないし続かないかもしれないので、“(not)continue...”。
初出20110629
再録20110718
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