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太陽が沈む、黄昏時。
一面の“紅”に包まれる街の中、俺は帰宅の路についていた。
「……」
何故だろう。
昨日、夾也に出逢った時は温かく感じた夕日が、今日は…
「---何だか、“泣いている”みたいだ」
誰が?
とか、
どうして?
とか。
理由なんて無い。
ただ、漠然とそう感じたのだ。
「…ははっ。今日の俺、やっぱり変だ」
何やら過敏になっているらしい自分に、苦笑を漏らす。
頭(かぶり)を振って、思考を追い出そうとした---所で、
『---駄目よ!逃げて…!!』
「……ッッ!!!?」
唐突に、脳内に響いた“声”と同時に、右目が激しく痛み出した。
「…何なんだ、一体…!?」
右目を押さえた拍子に、姉さんがつけてくれた眼帯が---ひらり、と落ちた。
「---やっと見付けたよ、“アリス”」
背筋が凍るような雰囲気を纏った…少女の声が。
俺の背後から…聞こえた。
“振り返るな、絶対に振り返るな---!!”
頭の中で、警鐘が鳴る。
完全に固まってしまった俺に、少女は---その白い両手を俺の腰に回し、抱き付いてきた。
「……なッッ!?」
「道に迷っちゃったのね…?でも、大丈夫」
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