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「…え?神原、さん…?」
俺をその背に庇うように現れたのは、神原さんだった。
「…どうして、」
「---ナオッッ!!」
何故、彼がこんな処にいるのか?
俺の疑問は、形になる前に、鋭い一喝によって遮られた。
「俺が“戒めの唄”を歌うから、今の内に---彼を安全な処へ!!」
「…御意」
一喝と共に現れたのは、今朝逢いたいと思っていた人物---夾也だった。
その手には、昨日と同じギターが握られている。
「え…?夾也、…って、うわッッ!?」
突然現れた夾也(と神原さん)に呆気に取られていると、急に身体が浮遊感に襲われた。
「捕まれ…振り落とされるぞ!!」
「な…ッッ!?」
俺の身体は、気付けば神原さんの肩に抱え上げられていた。
その体勢の不安定さから、不本意ながらも彼にしがみつく。
「夾…気を付けろよ」
「はは…っ、大丈夫だよ」
神原さんは、心配気な顔を一瞬夾也に向けた後、息吐く間もなく駆け出した。
「---夾也ッッ!!」
何が何だか全く分からない。
ただ、このまま夾也と別れるのは…憚られて。
「…またな!!」
「……!!---うん!」
俺の言葉に驚いた後、嬉しそうに笑う夾也を見た処で---彼の姿は、夕闇へと溶けて行った。
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