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---た、途端に。
「…あ、れ…?」
急激な睡魔に襲われ、それに逆らう事も出来ず、意識はホワイトアウトしていった---。
***
「…眠ったの…?」
弟の身体を優しく抱き留めながら、蛍は呟く。
その表情は、酷く憔悴していた。
「…ああ。全部は“盗られ”なかったが…殆ど盗られちまったらしい」
蛍の漏らした呟きを拾った神原は、懐から煙草を取り出す。
1本口にくわえて、火を点けようとして---
「…どうして!?今朝、ちゃんと私が“封じた”のに…!!」
眉根を寄せて睨み付けてきた蛍を見て、火を点けるのは諦め、煙草を懐に仕舞い直した。
「…こいつが、現場に落ちていた。恐らく…坊やが自分で“触れた”んだろう」
「触れたって…そんな、まさか…!?」
煙草を仕舞った手をそのままに、神原は再び懐から白い物体を取り出した。
「もう…力が抑えられないの…?」
彼の手に握られていたのは、“眼帯”だった。
今朝、蛍が弟に付けた物---。
「…だから言っただろう。動き出した物語を止める事は…“俺達”には、出来ない」
「……」
差し出された眼帯を見詰めていた蛍は、無言でそれを受け取る。
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