至福の時。

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「司くん。うちの撫子では不満か」 真継君は大真面目に問う。 司はギョッとした。 「べ、別に…そんなんじゃ…」 司の語尾があやふやになった。 七美がすかさず茶化しながら助言する。 「真継さんはフラれた男の心の葛藤なんて知らんでしょうよ」 わたしと司は、ぎくりとして黙り込んだ。七美、それは地雷だよ…。 昔から、ズバリと言う方だったから。 「お、俺は帰る。バイトあるから」 司は いきなり立ち上がり、そのまま部屋を出ていく。 「ああ、私も。用事があるんだよね」 …七美まで。 「あ、ありがとう。わざわざ」 二人を玄関まで見送る。 お大事に、…と、七美が手を振りながら、振り返らずすたすた歩いてく司を追っていった。
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