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中庭では3年生のクラスがオープンカフェをやっていた。
人も多かったけど、すぐに奥の席で撫子ちゃんと慶吾さんが二人で お茶をしているのが見えた。
近くまで近づいて、ちらりとわたしは慶吾さんと目があった。
けど、構わず慶吾さんは撫子ちゃんと話している。
「…司君は祈里ちゃんが好きなんだよ。無謀な片思いなんてさっさと諦めて 俺と幸せになろう?」
わたしたちに気付いていて、敢えて大袈裟な声色で言っているようだった。
でも、撫子ちゃんは気付かない。
「どうして…わたしは祈里ちゃんじゃないんでしょう?
どうして住川くんの大好きな祈里ちゃんになれないのでしょう?
住川くんを幸せにさせられるのは、他の誰でもない――祈里ちゃんなのに…」
撫子ちゃんは沈んでいた。
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