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嗚呼、俺はもう"終わる"のか。
痛みが走り、動かない体に鞭を打ち、辺りを見回すと味方がいた。
だが、動く気配はない。
…あいつは戦死した。
辺りは血の海。
むせ返るような血と何かが焦げたような臭いが鼻につく。
生憎、その臭いにはもう慣れてしまった。
そう、俺達は戦に敗れたのだ。
認めたくない。
そんな願いは聞き入れられることはなく、心に虚しく突き刺さるだけだ。
もう一度、体を横たえた。
広がる青い空。
吸い込まれてしまいそうだ。
否、吸い込まれてしまった方が楽になれる気がする。
咳をすると、口を押さえた手に血がついた。
俺も"終わり"が近いのだろう。
刀で貫かれた胸から、血が噴き出している。
それは止まることを知らず、地に生えた草を赤く染めていく。
医者ではないが、致命傷だと分かる。
このまま眠れば楽になれるだろうか。
目を閉じると走馬灯のように過去の記憶がよみがえる。
故郷のこと、友人のこと。
そして…夫婦の契りを交わしたあの女のこと。
やがて、俺は息をするのをやめた。
俺は死んだのだ。
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