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「じゃあ、モデルさん…えっと、芦屋くんは窓際に行ってね。香椎さんはブーケ持って椅子に座って」
「はーい。じゃ、後で。がんばってね、真子」
「うん。梨玖くんもね」
奥の部屋に入ると、ピンクの花で統一された披露宴会場がセットされていた。カメラマンさんとアシスタントさんが3人すでに準備していて、あたしと梨玖くんが慌てて指示に従う。
「じゃ花嫁さん、目線右上にくれる?そうそう。あ、もうちょっと顎引いて」
ドレスの裾や髪の撥ねなんかをアシスタントさんにいじられると、なんだかくすぐったい。そしてレンズを覗くカメラマンさんの指示に言われるまま動く。
「じゃあ撮るよー」
バシャン!…バシャン!
視界の隅で、タキシードの梨玖くんが指示を聞きながらもあたしを眺めていてくれてるのが見えた。
梨玖くん。
大好きだった、あたしの元彼。
あたしは今でも梨玖くんが好き。だけど、彼にはあたしよりもっと大切な人がいた。
梨玖くんの大切な人は男の人。
それを認めたくなくて、あたしも梨玖くんも足掻いたけど、ダメだった。
ゲイの元彼と、元彼女。
だけど不思議なことに、付き合ってた時より今のほうがあたし達の仲は濃いように思う。
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