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右手には土星の形をしたぬいぐるみを抱え、左手には何やらハンドボールぐらいの大きさの球体を地面にめり込ませながら
「…deleta」
高くも低くもない透き通るような声で彼女が小さく呟く
そして、まるでその言葉に力でもあるかのように地面にめり込まれた球体が粉々に砕け散る
その光景があまりにも急であり得ない状況からか、俺の思考は考えることをやめ
それでも、一つだけ分かったのは
キラキラと破片が舞い散るなか風になびく金色の髪、そしてその隙間から見える彼女の青い瞳、悠然と立つ彼女そのものが
不覚にも綺麗だと思ってしまったこと
「これはこれは、夕輝さん。こんにちは」
ゆっくりと振り向き呆然と立ちすくむ俺に気づいた彼女は、俺の存在に特に驚いた様子もなく淡々としていて
そして、何事もなかったかのように相変わらずの無表情でそう告げたのだった。
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