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「……………え?」
あたかも、東から昇る太陽が、西へと沈む道理を口にするかの様に、自然かつ当然を前提とした梨佳の口振りに、
秀は思わずぱっくりと口を開いてしまった。
――刹那。
「いたぁぁぁぁぁっっっ!」
彩音のだみ声が、屋上の全てにドでっかく響いた。
「…………はへ?」
秀の口が、違う意味でぱっくりと開いた。
そこから、彩音が秀の近くにやって来るのに、十秒を必要としなかった。
ここで、十秒フラットに秀の元へと辿り着いたのならば、地味にふざけたダジャレが完成していた。
しかし……ブラコン的に重病の彩音だが、今の彼女はそんな下らないダジャレの為に無駄な時間を消費するつもりはなかった。
さながら弾丸娘と化した彩音は、素早く秀の眼前までやって来ると――
「これは、私のだ!
貴様になどやらんっ!」
完全に向こう見ずな態度で、びしぃっ! と梨佳を右手で指差しながら、左腕を秀の肩に回し、ついでに秀の胸元へと自分の体を納めていた。
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