四話め

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 渓流とは、無知である事が、時に命に関わる大惨事を招く時がある。  川の流れは、根本的に均一ではないからだ。  一見すると、川の流れは全てが均一に……一定の速さで流れているかに見える。  しかし、それは間違いだ。  どんなに静かに流れている様に見える川であっても、目では見えない……まさに暗流する一部のエリアでのみ、  激流をも連想させる、荒々しい勢いで、常時流れていたりもする。  ――結果。  なんて事のない、静かな川で……いきなり流れに飲み込まれ、  そのまま帰らぬ人になってしまう事すら、現実として起こり得るのである。  彼女――大槻梨佳は、そんな無知な川遊びの果てに流され……あわや生死の境をさ迷う寸前にまで陥った。  それまで、全くと言って良いまでに落ち着いた川の流れが、瞬時に変わり……気付けば体の自由を完全に奪われ、  もはや、抗う事すら出来ない。  そんな……大自然の脅威に、ただただ、ひれ伏す事しか出来なかった時だ。
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