一話め

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「兄よ、朝だぞ」  穏やかな声音で、優しく口を開く少女がいた。  どことなく落ち着きのある顔立ちは、その雰囲気からか? 実年齢よりも大人に見える。  実際……化粧などをして、服装も相応の格好をすれば、本来の年齢よりも高く見られてしまうかも知れない。  しかし、今の彼女は制服姿。  近所にある高校のブレザーを着ている。  こんな格好をしているのだから、彼女が何か特別な趣味を持ってない限りは、普通の女子高生なのだろう。  事実、彼女は女子高生だった。  ……なんて捻りがない文面だろうね。  ………。  いや、まぁ、それはそれとして。  ともかく、全体的に穏やかな雰囲気を無言で醸し出していた彼女の名前は――  石川彩音。 (いしかわ・あやね)  ――と、言う。  年齢は16歳。  今、ベッドですやすやと寝ている少年……石川秀の妹である。
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