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「またやったんすか?」
新曲の練習をするのにスタジオに入った。こんな暑いんにやる気なんか起きん。けどやらな。
集合時間を過ぎても来ないドラム担当の森木に電話をしようとして、鞄にもポケットにも携帯がないことに気づく。あぁまたや。またやってもうた。
「あーもうなんやねん!すまん菊ちゃん、携帯貸して。」
「井本さんまじで気を付けた方がいっすよ。悪用とかされちゃうかもだし」
わかっとるわ!なんて半ば逆ギレしながら俺と同じギター担当の菊地の電話を借りて、自分の携帯に発信してみる。
「悪用なんかしてたらどついたるけどな」
「おはよーございます兄さん」
呼び出し音を聞きながら菊地と笑っていればようやくきた森木。一言キレてやろうと思ったところで呼び出し音ではなく低い声が聞こえた。
『…はい、』
「あ、それ俺の電話やねんけど」
『え、あ、そうなんですか』
「拾ってくれてありがとうな。で、今どこ?」
『新宿駅の、南口改札の前ですけど…』
「あぁほんま。じゃあ今から行くから階段下りたとこにいてな」
なんかぼそぼそと話す変な奴。でもまあいいか。拾ってくれたんやし。相手が何か言っていたが電話を切って菊地に返し、スタジオが駅からすぐのところにあるためそのまま向かう。
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