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それから連絡先を交換して、スタジオに戻った俺。なんやあいつ面白い。藤原一裕。多分俺と同世代やな。
「どうしたんすか井本さん。機嫌いいっすね」
「聞いて聞いてー。実は携帯拾ったやつがさ……」
一番しっかりしている菊ちゃんに先程の話をしながらピッチを合わせたりする。遅刻してきた森木も、寝ていてやり取りを聞いていなかったベースの栗も興味津々だった。
「…連絡先教えたって!本名バレるじゃないすか!」
俺らのバンドはみんな本名非公開。特に意味はないが。俺は貴、菊ちゃんは浩、森木は俊、栗は直。それしか公表していない。本当は顔出しもせん予定やったのに。社長が俺らんこと男前やー褒めよるから。
「大丈夫や。やって俺、自分のデータの名前"俺"にしてるし」
そう言えばみんな爆笑。なんやねん、俺は俺やろ。
「俺、って……」
「うっさい森木」
まぁ、こんなフランクな部分が楽しかったりするし。よしとしよう。さて、練習せな。喉を潤すために水を少し飲む。…あ。俺ボーカルもやってんねん。器用やろ。
「兄さーん!スティック忘れた」
「…そのケツポケットに刺さってんのはじゃあ何やねん。」
「あ、忘れてなかったー流石俺!」
「…………。」
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