~幽玄の森~

4/4
前へ
/4ページ
次へ
そこには田んぼや畑が広がる田園風景だった。 「あれ?こんなに田舎だったかな?…いや、違う。これは明らかに違う場所に出てしまったようだ」 少年は元来た道を戻ってきたような気がしていたが、どうやら 山の向こうへ通り抜けてきたらしい。 最初はそう思っていた。 だがどこか心の奥では感じていた。 「道を間違えたのではない。家がなくなっていた」と。 「そもそも田舎とはいえ、住宅街や公園などもあったはずだ。ここはいったいどこなんだ?」 確かに山に囲まれた町を通っては来たが、途中高層マンションなどもあったはずだ。 しかしどこを見渡しても畑しか見つからない。 しばらく歩いて…少年はある答えにたどり着いた。 「もしかして…過去にタイムスリップしてしまったのか…?それなら家が見当たらない理由も納得が…」 残念ながら少年の答えは間違っていた。 しかし、自分の体が宙に浮き始め背中から羽が生え 体の自由が利かなくなって初めて、本当の〔コタエ〕を知る。 だが、気づいたときには、いや気づいてしまったからだろうか 少年の体は白く霞んで消えてしまった。 「お前達夫婦も、孫の命日くらいしか来ないから落ち着いたろう?」 「お父さん…。そうですね、ここにくると子供の頃よくあの森で遊んだことを思い出しますよ。」
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加