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そこには田んぼや畑が広がる田園風景だった。
「あれ?こんなに田舎だったかな?…いや、違う。これは明らかに違う場所に出てしまったようだ」
少年は元来た道を戻ってきたような気がしていたが、どうやら
山の向こうへ通り抜けてきたらしい。
最初はそう思っていた。
だがどこか心の奥では感じていた。
「道を間違えたのではない。家がなくなっていた」と。
「そもそも田舎とはいえ、住宅街や公園などもあったはずだ。ここはいったいどこなんだ?」
確かに山に囲まれた町を通っては来たが、途中高層マンションなどもあったはずだ。
しかしどこを見渡しても畑しか見つからない。
しばらく歩いて…少年はある答えにたどり着いた。
「もしかして…過去にタイムスリップしてしまったのか…?それなら家が見当たらない理由も納得が…」
残念ながら少年の答えは間違っていた。
しかし、自分の体が宙に浮き始め背中から羽が生え
体の自由が利かなくなって初めて、本当の〔コタエ〕を知る。
だが、気づいたときには、いや気づいてしまったからだろうか
少年の体は白く霞んで消えてしまった。
「お前達夫婦も、孫の命日くらいしか来ないから落ち着いたろう?」
「お父さん…。そうですね、ここにくると子供の頃よくあの森で遊んだことを思い出しますよ。」
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