一人目 大家(オオヤ)さん

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 酷く暑い中、ようやく引っ越し作業が終了し、五畳の狭い部屋に腰を据えた。 「夜梅(ヨウメ)荘かぁ……ぼろいし狭いし風呂ないけど、キッチンあるし家賃安いから、贅沢言えないな」  近くに銭湯があるらしいし、後で行ってみようかな。  待てよ。ここに住むんだから、まずは挨拶回りをした方がいいよな。  今日は全員でなくても、大家さんには早めに挨拶に行かないと! 「よし、初の一人暮らしなんだ! 楽しく過ごせるよう、ここの皆さんと仲を深めるぞ!」  勇んでドアを開けて、閉めて鍵をかける。  表札には原という自分の名字が書かれ、輝いて見えた。  錆びの目立つ階段を下りて、一階の大家さんの家を探す。 「名字も大家だったはず……覚えやすいよなぁ」  一階の左端に大家という表札を見つけ、恐る恐るチャイムを鳴らす。  思えば、会ったことがない。なんでか知らないが、全部不動産側で連絡を取り合っていたな。  どんな人なんだろう?
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